山の芋 秋の山は笑ってる

 

 

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 山の芋 (左から 銀杏芋 佛掌芋 長芋)

 

 

 

         山の芋 秋の山は笑ってる

 

 

 山の芋は名前の通り、山野に自生するヤマノイモ科の多年草蔓草である。茎は細く、他の植物にからまって伸び、時には何メートルにまで達する。夏は可憐な白い花をつけるが、秋には葉脈に小さな暗褐色の実をつける。この実を零余子(むかご)と言う。蔓を思い切り引っ張ると、その実がポロポロと地上に落ちて来る。落ちた零余子はそれぞれに年数を掛けて再び山の芋に成長するのだが、大抵人間が拾い集めて食べてしまう。串刺しして付け焼きにしたり、もっと数が多いと、焙烙(ほうろく)で炒り、軽く塩を振って食べるのがよく見受けられる。零余子を生姜の炊き込み御飯にし物相(もっそう=飯の量を計り切り丸い形にする)にしたのは、如心忌の際の茶懐石の決まりとなったからのようである。

 さて山の芋だが、蔓の下から掘り出すのは至難の業で、1メートルぐらいの細い山の芋を掘り出すのに数時間も要し、専門のツルハシのようなモノで深さ5メートルぐらいまで掘らないと、そっくりそのままの原型で掘り出すことは先ず不可能である。山芋堀の専門職の方にお任せするしかない。所謂『自然薯(じねんじょ)』と呼ばれる天然物のことを言っているのだが、一般に八百屋で売られていることは殆どあり得ず、廉価で求めることも出来ない代物である。店先に並んでいるのは、山の芋の改良型ばかりで、真っ直ぐで水気が多く白く、最も一般的に手に入るのは長芋の類である。水気が多いために、あれこれダシなどは入れ辛く、短冊に切ってお醤油を差し、青海苔でも掛けてお芋の刺身として食べるのが一番無難である。ひね生姜のような形で、とろろにして美味なのは佛掌芋(つくねいも)。佛手柑(ぶしゅかん)のような掌状のモノは大和芋。扇を開いたような形をしたのが扇子芋。扇子芋の小型版が銀杏芋(いちょういも)などと呼ばれている。

 山の芋は独特の粘りが身上で、これを摩り下ろした「とろろ」は古来、精がつく食べ物の代表格として珍重され、『山薬(さんやく)』とも呼ばれて来た。とろろを酒でのばしたのが所謂「芋酒」で、江戸時代遊郭などで遊ぶ男どもは、これを飲(や)れば、「ひと晩で5,6人乗り廻すのはわけねぇや」と信じていたとかいないとか。アホウ!!アッハハハハ!でも最近の研究で、山の芋に多量のジアスターゼが含まれていることが分かった。そしてその数値は大変な高さで、大根おろしなんか足元にも及ばないというから恐れ入る。だからこそ「麦とろ」と言う食べ方が考案されたのだろう。消化によくない麦飯を、噛まずに何杯もお代わりしたくなるのは、そうしても差し支えないからなんだろう。但し消化酵素と言うのは熱に弱い。従って鮪(まぐろ)があれば山掛けに、卵の黄身を落として食べる月見、山葵(わさび)を添えて食べるとろわさ。山の芋は冷たい生食のとろろに限るのである。

 ところで皆さんは以前話題にさせて戴いた『おせん』と言う漫画から起こした劇映画があったのをお忘れでしょうか。当家では「ワッチは、ワッチは!」と一大マイブームになっていましたが、おせんちゃんになる蒼井優は、もう最高の役どころでしたね。その時出ていたおせんちゃんちの「一升庵風名物とろろ飯」はお忘れでしょうか。あの時どんなにオイヒソウに見えたであんしょか。そこでワッチがあの時の、テレビで見た通りのリシピで試作してみたんであんすよ。結果!目茶オイヒイ!そんで皆さんにそのリシピを公開しちゃいまひょう!

     あたり鉢   とろろ汁

お料理の世界では「すり鉢」とは決して言いません 板場さんの運をすらへらないように 通常どの板場でも「当たり鉢」と言います

 

        おせんちゃん 一升庵名物とろろ飯の作り方

       【材料(4人分)】として
       自然薯(天然の山芋) 300グラム
       ☆自然薯は11月~2月頃が旬。一升庵のとろろは天然さんがイチバンなんですが、今なら山芋(大和芋)で代用、試してみましょう。
       魚の煮汁(魚のアラを甘辛く煮たものの汁 薄切りの生姜さんが入ってたほうがいいかもであんす) 約500cc
       ☆アラや骨は全部取り除いてください。
       (アラをしょうゆとみりん、砂糖を加えて炊いたものを、1晩から2晩ほど味を馴染ませて、昆布だしで薄める)
       大根おろし 少々足しておきましょね。

       麦飯(米7:麦3の割合で炊いておく) 4人分

       1) 自然薯は洗って、ひげを火であぶる。
       ★自然薯は、まるごとうまみをいただくために皮ごとすりおろしますので、包丁は使わずに、ひげだけを火であぶって取り除きあんす。

       2) 当たり鉢の中で皮のままおろすんであんすよ。次に、すりこぎを使って空気を抱きこむようにはじめは強く、だんだん弱くするようにねぇ。

       3) 2)に温めた煮汁を加えてなじませる。
       ★とろろが煮えないように少しずつが大事な大事なポイントさんです

       4) 最後にもう一度大根おろしを少々加え、ひとすりふたすり、これが大事さんです。

       5) 麦飯の上にたっぷりのとろろさんをかけて出来上がり。
      ★そう言えば竜さんが、「とろろ好きは飯が泳ぐぐらいたっぷりとろろをかける」と教えてくれていましたなぁ!

 まぁここまでなんか、絶対にメンドクテ出来なかったら、既成のダシ醤油(大匙4)を、お酒(大匙2)と味醂(大匙2)と少々のお水と合わせ、ひと煮立ちさせ冷ませておく。別に大和芋を当たり鉢で当たるか、胴金の当たりカネでおろしたとろろに、たっぷりのとろろに卵黄一個を入れ、カチャカチャ当たり鉢の中で雑ぜ合わせながら冷ました汁を流し込む。(コッショリ ダシ汁を合わせる時に白味噌をホンのひとつまみ隠し味で入れると味にコクが出て美味しいおっせぇ!)単にとろろに醤油を掛けて食べるだけならこっちのほうがよっぽど美味しいってことですかえ、よがんすよワッチはこの美味しさを請負いますんで!

 今日は久し振りに京都へ。たった一泊でお泊まり。今週は妻が忙しいためであり、膝や腰痛の試験でもあり、何よりも杏に逢いたくて!山の芋の記事を書いていたら、あらっもうそろそろ京都に到着しそう!紅葉はまだまだでっしゃろなぁ。11月20日過ぎがええかもニャオ~~ン!ほな!

 

 今回のBGMは、絢香とコブクロのコラボの歌 「あなたと」

 

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山の芋 秋の山は笑ってる への4件のフィードバック

  1. 道草 より:

    「グルメ硯水亭」へようこそお招き下されました。子どもの頃、裏山でたまに零余子を採って食べました。そのまま生で噛ったものです。少し生臭いのですが、噛んで入るとほんの少し甘味が出てくるような・・・それ程おいしいとは思いませんでしたが、味付けをすることなど思いつかない慢性空腹の餓鬼んちょでした。山芋は掘るのが難しく、途中で必ず千切れて諦めてしまいました。滅多に見掛けない上に子供にはそれほど魅力が感じられなかったのでしょう。畑で自然薯を作っている農家は何軒かありましたが。山陰線八木町は山芋が名産として人気があります。地元では山ノ芋と称していますが、丸型の捏ね薯(佛掌薯)です。たまに知人から貰うことがあり、その食感には大満足しています。「硯水亭メニュー」にあるとろろ汁以外にも、薯蕷饅頭・軽羹(かるかん)・煉切(ねりきり)など、京都の和菓子にはなくてはならない材料の様でもあります。八木町には他にも、キヌヒカリ(米)・みず菜・九条ねぎ・丹波栗などが特産品になっています。松茸狩も謳っていますがどうでしょうか。丹波黒大豆・丹波大納言小豆・紫ずきんなどはもう少し奥地の名産です。食物博士には釈迦に説法でした。不肖の私は「おせん」は拝見しておりませぬが、「硯水亭レシピ」通り家内に命じて「一升庵名物とろろ飯」を作らせ、今夜の秋の夜長の銘酒の肴とさせて戴きます。なお、巨人の選にもとろろを差し入れしなくてはなりませんねぇ。奥様もご同感のことと思いますが・・・。「とろろ薯摺る音夫にきこえよと」山口波津女。

  2. 文殊 より:

               道草先生
     
     ただ今帰りました。テレビのスィッチを早速ひねってみたら、もう試合は終わっていました。残念かな、Gは沈みました。夕べ京都では野球の「や」の字の話も出ませんでしたから、実はほっとしていたところなんです。彼女の実家ではプロ野球の話は完全に終わっていましたから。でもこの7試合まで進んだGに少なからず密かに期待をしていたのですが、ああああ、無念かな、あらゆる意味で若さで圧倒したライオンズに、手も足も出なかったのでしょう。獅子党には心から祝福したいと存じます。多分我が奥の宅でもそうであったように、首都圏決戦では他の多くの圧倒的な方々に失望を与えたことでしょう。福岡と北海道なんていいんですが、あらゆる手立てを使っても勝てなかったのですから、当然弱かったのでしょうね。悔しいけど、そう認めざるを得ませんです。
     
     明日当家ではとろろ飯を作って食べる予定です。元気をつけなきゃやってられません。とろろ飯にはそんだけの効用がありそうで嬉しいです。愛宕の麓の、飯屋茶さんにある平野屋さんでは零余子の御飯が出ていました。素朴ないいお味です。零余子を、やたらと邪険にするのはどうかと思います。あれはあれで素朴ないい味ですものね。京都の和菓子にはこの山の芋は欠けませんです。カルカンもネギキリもみんなそうなんですからね。明日はせめてカルカンでも購入し、我がGの痛みに耐えましょう。
     
     丹波の材料は特別優秀なモノばかりです。ワインだって近年凄い人気があると言います。その中で黒大豆は特別なモノと心得ています。あんなに豊穣な土地に、住む人が次第にいなくなるなんて不思議で不思議でなりません。日本の農政もそうですが、一般の私たちも同じような目線があって欲しいのです。是非ともみんなみな復活させねばなりませんね。今日も有難う御座いました!
     

  3. 道草 より:

    巨人ファンの硯水亭さんには何と申し上げて宜しいのか(内心では、はっきりしていますが)、恐らく奥様のご実家ご一同も、言いたい心境を内心深く必死に堪えておられることと思います。身近に巨人ファンが存在していることは、関西の阪神ファンに取りましては実にアタマを悩ます事態なのであります。思い切り叫びたいコトバがありますが、やはり日頃のご厚誼上からそれは押さえ(必死で)、奥様のご実家の方々とと同一の心境に立ちまして、そのおっしゃりたいお言葉を100分の1に柔らげで代弁(筆)しますれば、「阪神をよう痛めつけてくれたやんか。そやのに、ナニしてんねン」と、なります。なお、本心は伏せまして私奴は日頃のご厚誼を謝し、「残念やったけど、来年がんばりなはれ」と、せめてお慰めの言の葉を・・・。まぁ、とろろでもたっぷり召し上がって傷心を癒して下されませ。一昨日は、近代文化遺産一斉公開の一つ本野精吾設計の「栗原邸(旧鶴巻邸)」(山科御陵)を見学に行って来ました。建築の専門家(野球もそうですが)の硯水亭さんに対して申し述べることはありませんが、80年前の建築にしてはかなりのモダンな建物で、借景や前景も抜群でした。家具調度類も本野氏が設計したとか。木製の丸椅子に座らせてもらいましたら、実に座り心地は満点でした。室内はかなり傷んでいますが現に栗原氏(医師)が住んでいるとかで、奥さんらしい人が説明してはりました。そんなこんなで、野球を離れた一日でした。結構見物客で賑わっておりました。やはり、京都では野球は終わったのでありましょう。

  4. 文殊 より:

            道草先生
     へへぇ、そうどすなぁ、いくらGファンのうちかて、もうどうでもよろしおすのや。多くはしゃべりとうないんゆうか、野球に、うちの大事なトサカ(頭脳)は行っておりまへんのえ。ちょっとも悔しい気持ちぃありゃしまへんしぃ~~~~~~~~。夕べの新幹線で東京に帰り、そのままとろろ汁でも仰山すすって寝こんじゃえば、それでよろしかったんどすけどなぁ。なかなか眠られしまへんどした。スポーツ欄やら、テレビも新聞もしばらくあかんでひょうね。出るとすぐ消してしまうか新聞丸めてポイしてしまうさかいに。平常心平常心!もう野球のない世界にオイコラもどろもどろ!先生から何やら大層なおなぐさみ頂きまして、おおきに!うっとこはもう大丈夫やさかい、ホンマにおおきに!!それより西友・ヨーカ堂なんか安売りしてまっせ。いこいこ・・・・・・・・・・!
     
     ところでTさんはアタマのいい監督が来てくれはってよかったですね。どこでもそうでしょうけど、特にオタクさまのほうは若手の成長に心から期待します。読売新聞は関西が発祥地です。言わば兄弟のようなものですが、今回はTさん出身の平野さんにやられましたわぁ、せっかく育てたいい若手をドンドコ外部に出さないほうがええんとちゃいますやろか。うちも同じですが、今回クジ引きで採った大野選手、いいですよ!Tさんも仰山いてはりますねぇ。楽しみにしていますさかい、どうぞおきばりやす!
     
     本野精吾先生のことはしばらくぶりで聞かせて頂きました。建築数は少ないのですが、モダニズムと言いますか、あの時代にコンクリートの打ちっ放しをされていたのですから、多分京都高等工藝学校の教授を勤められていた時代から、生徒には人気抜群の素晴らしい先生だったことでしょう。兄の外務大臣をした一郎、早稲田大学の教授をして、4代目読売新聞社長になった栄吉郎、そして建築家の本人、四男に京都帝国大学を出て電気工学で活躍した亨、皆さんそれぞれ優秀でしたね。清吾先生は世界大恐慌の年に建てられた栗原邸(旧鶴巻邸)などは中村鎮式コンクリートブロックを駆使しモダニズム建築の追求に大いに苦心惨憺されたのでしょう。家具のデザインや舞台装置やグラフィックデザインや服飾デザインまで別格なまで広範囲であったことは今日的で凄い御仁でしたネ。自邸や西陣織会館や京都工芸繊維大学本部など、建築数は生涯10箇所と少なかったのですが、あの時代にはそれこそ最も先鋭的な建築家ではなかったでしょうか。素敵ないい休日を過ごされましたね。妻の家にいる時は始終バタバタしていて、どうも余裕がなく、帰ってバタンンキュ~~~がいつもの例です。みんなからよくして戴いておりますから、杏も幸せ者で御座いましょう。今日もご丁寧に有難う御座いました!
     

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